硫酸技術   by T.Ono
 良くある質問(FAQ)−3
 
燃焼炉・ボイラ:
  • 硫黄燃焼炉出口ガスの高温(〜1,100℃)に耐える金属材料はありますか?
    UMCO50とか、ステンレス鋳物(SCH18など)が使用されてはいますが、内部の空気冷却等を施さない限り3年程度しか持たないようです。
  • ボイラバイパス弁が高温で損傷し、定期的に更新しています。 対策はありますか?
    上述のごとく、通常の構造では長寿命は期待薄です。
    中国のサイトでは、プラグ弁を高温ガスの低温ガスダクトへの接続口に設けるという例がありますが、私は実例を知りませんのでお勧めできません。
    ボイラを新設・更新するのでしたら、バイパスガスをボイラ内を通して部分冷却し、この温度の下がった中温ガスとボイラ出口ガスを混合する「コールドバイパス法」というのが実用化されているという技術資料を見たことがあります。 理論的には可能と思いますが、これも実例は見たことはありません。 メーカー(海外ですが)は知っていますので、ご要望があればお教えします。
  • 硫黄燃焼炉出口SO2=17%としたいのですが、注意することは何でしょうか?
    残念ながら、SO2=17%という運転例は知りません。 私の知っている最高SO2濃度は、12%です。
    一般的にいえることは、下記です。
    @SO2濃度が上がることは燃焼ガス中のO2濃度が下がることですから、未燃焼のS分に対する対策が必要です。 炉出口に、助燃用のセラミックや燃焼触媒を設けている例があります。
    A燃焼ガス温度が上がりますので、内張り煉瓦の耐熱度に考慮するべきです。
転化器・熱交・触媒:
  • 転化器回りのマンホールや弁などは、ボルトナットを使用せず全部溶接なのは何故ですか?
    転化器回りは、運転時は高温(200〜600℃)になりますので、ボルトナットでは膨張・収縮の為に緩む恐れがあります。 一旦緩んでガスが漏れますと、すぐに硫酸が生成して腐食生成物ができ、増し締めしても止まりません。 それ故溶接してガスシールをより完全にしています。(開放の頻度が小さい=通常数年に1回=こともあります)
  • 転化器本体とマンホール蓋がステンレスだと、開放が困難。 解決策?
    サンダーで削るか、溶接で飛ばすしかありません。 1回ごとに溶接部が減っていきますので、転化器のフランジの外に損耗板を設けておき、これにマンホールを溶接するようにします。
  • 転化器回りの弁(ステンレス製)が動かなくなりました。 原因?
    場所がどこか不明なので正確にはアドバイスできませんが、一番可能性があるのはガス中の微量の水分により生成した硫酸が凝縮して、腐食生成物を作っていることです。
    乾燥塔で乾燥が不十分になっていないか、ミストキャッチャーでの酸飛沫の捕集がきちんとなされているか確認をお勧めします。
  • 高温での炭素鋼の引張強度のデータが有りません。 転化器等の強度計算はどうするのですか?
    たしかに、JIS等には転化器周りの高温(500℃以上)での炭素鋼の引っ張り強度のデータが有りません。 転化器、熱交換器、ダクトなどでこれほどの高温になる場合は強度計算をするのに困ります。
    それ故、私の居た会社では、炭素鋼の高温での引張強度の実験データを持っていて、それを使用していました。 勿論顧客の承認を得ていました。 多分、他のエンジニアリング会社でも同様と思います。 このように、「現実が規格を超えている」例は実務に多いものです。
  • 転化器周りでの、炭化物球状化の影響は?
    炭素鋼や低合金鋼では、430℃以上の高温で長期に使用しますと、鉄と炭素の化合物で鋼組織中の強度を担うパーライトが分解し、結晶粒内や粒界に球状の炭化物として析出します。 こうなりますと鋼は強度低下を来します。 実際の例では、430℃前後で20年程度使用した設備で、強度が20%低下した例があるとのことです。
    転化器周りは、まさしくこういう温度ですが、現実には40年使用している例が有りますし、機器の強度計算時には大変大きな余裕を見ているので、この「球状化」による強度低下で転化器が損傷するという例は聞いたことが有りません。 むしろ、高温腐食による壁面鋼材の肉厚減少で更新を余儀なくされることが一番の原因です。
  • ステンレス鋼で転化器や熱交換器を作ると、鋭敏化で問題は起こりませんか?
    文献上では、転化器周りのガス温度(400〜600℃)でSUS材の鋭敏化が起こります。
    ただ、転化器では30年以上前から転化器内部にはSUS材が使われていますし、熱交換器もSUS材で製作されたものが20年ほど前からありますが、強度上の問題を起こしたとは聞いておりません。 鋭敏化は、応力腐食割れの原因になりますが、転化器周りには乾燥状態のガスしかありませんので腐食の懸念は小さいです。
  • 転化器を更新し、SUS304製にする場合、第1層の内貼り煉瓦は必要でしょうか?
    昔の転化器では、シェルは炭素鋼製で、高温になる触媒第1層に接する部分は耐熱保護を目的として耐火煉瓦を内貼りしたりしていました。 シェルをSUS304に更新すれば、耐熱性の面では問題は無くなりますので、煉瓦の内貼りは撤去して構いません。
    この場合、当然内径が増えますのでそのことを忘れずに。
  • 触媒のふるい分けを計画しています。 補充触媒量はどのくらい見ておけばいいですか?
    一般に、触媒量の10%程度を用意します。
  • 古い触媒を引き取って処理してくれる会社はありますか?
    引き取ってバナジウム回収をする会社があります。 (最近確認しました) ただし、産廃処理ですので有償です。 例えば、新興化学工業(株)などです。
  • 異種の触媒を同じ層に充填する場合、混合しないように分けておく方法はありますか?
    私自身には経験がありません。 触媒メーカーにヒアリングしましたところ「2種の触媒の間に、ステンレス金網や磁製ボールを敷いている例がある」とのことです。 ただ、
    1)金網の場合、目詰まりの恐れがありますので通風抵抗を監視しておくこと
    2)磁製ボールの場合、篩分けなどでの取り出し時に混合する恐れがあるので、踏み
    つけずに出す方法をとること。
    に注意してください。
  • 触媒にセシウムを加えると、なぜ低温活性が向上するのですか?
    硫酸触媒は、多孔質の触媒担体の空隙に、高温で融解したピロ硫酸カリの液相が存在し、この中にバナジウム−硫黄の錯体が溶解してSO2の反応速度を推進するとされています。 400℃以下になると通常のバナジウム触媒の活性が急減するのは、低温では溶解しているバナジウム化合物が析出・固化してしまうためとされています。
    セシウムを加えると、セシウム―バナジウム―硫黄錯体となり、このものはカリウム塩のみのものより溶融温度が低く、低温でも液相に融解したままで存在し、活性を維持するためとされています。
  • 高活性・低圧力損失の触媒に変えたところ、転化率が下がりました。 何故でしょう?
    最近聞くトラブルです。 古い設計では、通風抵抗を抑えるために転化器の空塔速度を小さくしています。 そこに最新の高転化率・低圧損失触媒を入れますと、触媒層がたいへん薄くなりかつ通風抵抗も大きく減少します。 そうしますと、触媒層は決して緊密に充填されてはいませんので、ガスが流れやすいところばかりを流れてしまう、「偏流」が生じます。 ガス流れの多いところは、触媒との接触時間が短くなり、転化反応が不足しますので結果として転化率の減少を生じます。
    この対策としては、触媒層の断面積を減らす工夫が効果があります。 通風抵抗をある程度増やすことにより、偏流が予防できます。
  • 建設後10年で初めて低温熱交換器を点検します。 点検・掃除方法を教えてください。 チューブはSUS304です。
    経過年数、材質から推測しますと、まだ目立った損傷はないと思います。
    ただ、低温熱交換器は乾燥塔からのガス中に含まれる硫酸ミストが熱交換器下部管外側に当たりますし、管内側もこの部分は200℃前後まで冷却されるので硫酸ドレンが出やすい部分です。 それ故
    1)乾燥塔からのダクト中で発生したベトが管外側に蓄積していないか
    2)下部チャンネル内にドレンの溜まりやベトの発生が無いか
    3)チューブの下部に目で見える腐食は無いか(下部チャンネルより観察する)
    などに注意してください。
    管外側に溜まったベトは、手前のみしか除去できません。 管内側は洗浄も可能ですが管外側は不可能です。 手で取り除くことしかできません。
    このベトの発生防止方法として、乾燥塔〜低温熱交間のダクトをSUS304に替えることは効果が有ります。
  • SO3クーラーなどからのドレン抜き作業の際、白煙を出さない方法は?
    多くの設備では、「何もしていあない」ことが多いのではないでしょうか。
    これは、白煙の発生がごく短時間に限られるためと思います。
    SO3ドレンポット出口配管を、排硫酸地下槽に配管で接続している例も聞きましたが、腐食がひどいようです。
    白煙を出ないようにするには、ドレン出口に透明樹脂によるケースを設け、その中にドレン受けを置き、ケースの排気を乾燥塔に吸引させる方法が考えられます。
  • 増強時、ブロワーを更新して風量風圧が増えました。 熱交換器の強度は大丈夫ですか?
    勿論、増強後の風圧から最高使用圧力(通常最高運転時圧力の1.25倍)を算出し、熱交換器の各部の必要肉厚を計算して確認する必要があります。 (胴板、チャンネル胴、チャンネル鏡板、管板、胴伸縮継手など)
    ただ、通常熱交換器の肉厚は腐れ代を除いても十分な厚さを取ってあることが多く、増強による圧力の上昇(せいぜい2倍)程度では強度不足になることはまずないと思われます。
  • SO3クーラーに比べると、エアークーラーの寿命はずいぶん長く思えます が?
    転化器周りのガス熱交換器の腐食は、
    1)乾燥塔からの硫酸のエントレ
    2)ガスが露点以下になって発生する凝縮硫酸
    3)炭素鋼の酸化被膜が形成される高温酸化
    等が原因です。
    SO3クーラーは、転化器からのガスを吸収塔の前で180℃前後に冷却するため、硫酸の露点以下になることが有り、凝縮した硫酸によりガス側出口(通常チューブ側)から腐食されます。
    これに比べて、エアークーラーは、転化器中間でガス温度を次の触媒層入口温度まで下げるのが目的であるため、ガス温度は430℃前後にまでしか下がらず、硫酸の凝縮はありえません。 それ故寿命がSO3クーラーより長いのもうなずけます。
  • 1992年に施工した熱交換器を解体します。 保温にアスベストは入っていませんか?
    私どもで使用していた保温材は、基本的にケイ酸カルシウム保温材でした。 これは、ずいぶん昔はアスベストを混入しているものもありましたが、(メーカーによりますと)1992年頃には国内でアスベスト入りのケイカル保温材を作っている会社は無かったのではないかとのことでした。
    勿論、正確を期するためには、専門の分析会社に、保温材の分析を依頼することをお勧めします。
  • スタート用の電熱予熱器ですが、フル負荷にしても昇温に時間がかかるようになりました。 電気的には問題ありません。 ヒーター表面の汚れでしょうか?
    ヒーターの表面が汚れますと、伝熱が悪くなりますので昇温に時間がかかります。 ただ、空気の温度が上がらないということは、ヒーターが冷えないということですので、発生した熱でヒーターエレメントの温度が上がって、焼損する恐れがあります。
    本当に「電気的には問題ない」のか? ヒーターエレメントが焼損していないか? 点検をお勧めします。
  • 予熱用シェル/チューブ熱交の下部管板(炭素鋼製)が変形して漏れます。対策?
    加熱用燃焼ガスをシェル側に通すタイプの予熱用熱交換器は、高温にさらされる下部管板が損傷されやすくなります。 管板を耐熱ステンレス鋼にする方法もありますが、恒久対策としては管板の無い縦型加熱炉タイプをお勧めします。
  • 転化器周りの熱バランスが取れず、常時予熱器を運転しています。 なぜでしょうか?
    一番考えられるのは、転化器入口のSO2濃度が低いことです。
    この場合、SO2の酸化による発生熱に対してガスの総量が多いため、触媒層出口温度が上がらず、熱バランスが取れなくなります。
    SO2濃度としては4.5%程度が下限です。
    SO2濃度がこれより十分高いのにバランスが取れないときは、
    @転化器・熱交換器の熱ロスが多い
    A触媒が劣化したりガスが触媒層を偏流したりして転化率が上がっていない
    B熱交換器が漏れていてSOガスがショートパスしている
    等が考えられます。
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