硫酸技術   by T.Ono
 プラント建設体験-4
 
Minor tribe girls at Shilin, Yunnan province
4.四川 攀枝花製鉄所(1987年〜89年)
40T/D COG脱硫サワーガス原料:

これも宝山と同じくコークス炉ガスからのH2Sを含むサワーガスを原料とするもので、ドイツ クルップ・コッパース社から受注しました。

この仕事では、まずユーザーである中国側の設計担当である鞍山化工設計院及び元請のクルップ社との間で、ドイツ エッセンで1ヶ月間「合作」つまり技術協議を実施しました。

クルップ社は、産業史に有名な「大砲王」でありプロイセンの軍需産業を支えたアルフレート・クルップが創立した製鉄会社の子会社でした。 休日に訪れた「クルップ博物館」で、プロイセン時代にクルップが製造した「世界最強」と唱える装甲鋼板を、クルップ社のやはり世界最強の大砲で撃ってみたという試験の説明を読みまして、まさしく「矛盾」をドイツでも実験したんだなあ、とおかしくなりました。

その後、中国の鞍山でまた「合作」を実施しました。
鞍山は旧満州、北京経由瀋陽の飛行場から鞍山までの道路を車で走って行きますと、見渡す限りの高粱の畑が続き、何時間も山が見えません。 これは、穀物栽培には最適だなあと思いました。

その後、現地から通訳も含めて4名が実習に来日し、富山の親会社の工場で3か月間滞在しました。 私は時折座学の講師として授業しました。
ところが、現地に行ったときには、実習に来た技術者3名中、実際に硫酸工場の担当は一人だけでした。 あとの2名は、長年の勤務の論功行賞として「日本に出張」させてもらったのだとか。

試運転指導で参りました攀枝花という町は、1960年代、ソ連との戦争に備えて「重工業を内陸に避難させよ」という毛沢東の指示に基づき建設された人工的な街です。 近くに鉄鉱石と石炭及び石灰石の鉱山があり、製鉄には最適な地理条件ですが、何しろ人が全く住んでいない山の中に製鉄所を建設したもので、万里の長城と同じく、中国人の粘り強さには敬服するしかありません。 私の居た頃は、人口75万人、専属のテレビ局もありました。
昆明から特急で8時間半、成都からは14時間かかるという陸の孤島のような町でした。
町と製鉄所は、長江の上流、金沙江のX字の両岸に建設されていました。 ですから、製鉄所内の物流は、トラックでなければ機関車がスイッチ・バックを繰り返しながら斜面を上り下りしていました。
働いている現地人は、もちろん中国各地から移住してきたのですが、中にはアメリカのMIT卒などという高学歴の人もいました。 聞けば、文化大革命のときに、懲罰として派遣されてきたのだとか。 他にも、文革の混乱時に迫害されて足が不自由になった人とか、文革の傷跡があちらこちらに残っていました。 
通訳課の課長は、「毛沢東語録」の学習で大学に優先的に入ったという紅衛兵上がりで、ドイツ語の通訳のはずなのにさっぱりドイツ語を知らないというおかしな人でした。 しかし、それでも首にならずにいるというのはなぜか? 中国流、と片づけていいのでしょうか? 分からないままでした。

当社の担当は、基本設計でした。 日本からの供給機器は、バーナーや電気集塵機の一部などごくわずかで、ほとんどが中国製でしたが、この「中国製」の質の悪さに悩まされました。
硫酸の循環ポンプは、試運転で2,3日運転すると酸漏れをはじめ、蒸気用のバルブはほぼ半数が外漏れ、内漏れを繰り返します。
又、修理に来た中国人の職人は怠け者ぞろいで、3人で組んでくるのですが、一人は溶接、一人は傍に立ってそれを見ており、もう一人は蓆を広げてずっと昼寝をしていました。

試運転指導に行ったはずなのにいつまでも試運転が始まらず、3ヶ月の契約期間は終了し、結局正月を挟んで6カ月滞在することになりました。
元請のドイツ人は5名、私の会社からは私一人です。 計装とか疑問があると日本の本社に問い合わせるのですが、電話は、申し込んでからつながるまでずいぶん待たされました。

攀枝花は、雲南省に隣接しているせいでしょうか結構暖かく、あちらこちらでバナナが実っていましたし、11月までプールで水泳ができました。 ただ、食べ物は新鮮な魚は望むべくもなく、毎日肉ばかり食べさせられました。 「野菜が欲しい」というと、「分かりました、コックに言っておきます」 しかし、次の日も肉でした。 文句を言うと「コックは交代勤務ですから」とのことでした。

結構鈍感な?私でもストレスを感じていたと見えて、半年の出張から帰るまでに体重が9kgも減少していました。

2,3年後?に上海での仕事に関連して現地を再訪しましたところ、亀や蛇の料理で歓迎してくれました。 山奥なので、タンパク質はなんであれ貴重なのでしょう。
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