硫酸技術   by T.Ono
 プラント建設体験-5
 
Shanghai crab
5.上海 呉渓化工総廠(1993年〜95年)
420T/D 冶金式→硫黄燃焼式への転換

突然大手総合商社から電話があり、「上海の硫酸工場に硫黄を売りたい。 原料がパイライトなのでこれを硫黄原料の設備への転換する工事の設計を頼みたい」とのこと。

上海は、宝山の時に長く関わりましたからなじみがあります。 このユーザーは、中国でも大手化学工場であり、製品は我々の親会社の某工場のラインナップと酷似していました。

とにかく、技術協議に訪問して、パイライト原料工場の汚さを何十年かぶりに味わいました。 昔の日本と同じく、あちらこちらは摩耗により穴が開き、SO2ガスが噴き出して臭い臭い。 焼鉱の粉塵が、風で飛散して工場中を真っ赤に染めていますし、地面は真っ赤な泥で埋まっています。
中国政府が、「沿岸部の、パイライト原料の硫酸工場は至急硫黄原料に転換するように」と指示を出したのだそうで、さもありなん。

競争はありましたが、最終的には元請商社の実力で仕事を勝ち取りました。 当社の担当範囲は、基本設計と、一部機器の供給です。
改造に伴い新設する機器は基本的には中国で調達しますので、日本から供給したのは硫黄ポンプ、硫黄バーナーと硫黄供給関連の計装機器などごくわずかでした。
改造しない部分は、中国製以外にはアメリカ製が目立ちました。 上海にこれらメーカーの支店、代理店がありますので、有利なようでした。

この会社の設計部門は、中国国内でも実力が評価されていて、他の国内硫酸工場の設計を請け負っているそうで、私の滞在中にも「洛陽の新しいプラントのスタートに出張します」と言っておりました。
建設がスタートしてからビックリしたのは、中国側で購入した排熱ボイラが、据え付け後に「耐圧基準が合格していない」ということでそっくり取り換えたことでした。 「管理がずさんで、時々こういうことがあります」と言っておられましたが、国営企業ならではの無責任体制なんだなあ、としみじみ思いました。
試運転時にビックリさせられましたのは、これも中国側で購入したエコノマイザーが、溶接不良?でしょうか、猛然と水漏れを起こし、まるで白糸の滝のようになってしまったことです。
これは試運転延期だな、と思っていたら、中国側では「切り離しますから、試運転は継続します」とのこと。

とにかく、当方担当部門はまったく問題なく、私は設計だけでなく試運転指導がよろしかった?と評価いただいたのでしょうか、工事完工記念パーティーでこの会社の「名誉技術顧問」に任命していただきました。
商社の方に「何をすればいいんですかねえ」と聞きましたら、「今後は”タダでアドバイスをお願いします”という意味でしょう」と笑っていました。

試運転終了後の日曜日、工場幹部に誘われて「陽澄湖」にバスハイクに行きました。 日本人は私と同行の計装技術者の2名、中国側は幹部連中にその家族まで加わって20名以上いたでしょうか。
「陽澄湖」は、有名な「上海ガニ」の原産地だそうです。 広い湖ですが、深さは大したことはなく、遊覧船に乗った後岸辺のレストランでカニを頂きました。
日本人は適当に食べてすぐに終わってしまうのですが、中国の方は、まことに丁寧に、肉を一切れも余さずにきれいに時間を掛けて食べていました。 帰りに、お土産、と言って生きたカニを6匹も藁で縛ったものを渡されました。 断ると「あなたが受け取らないと、我々もお相伴できません」と押し付けられました。 役得、なんでしょうね。
ホテルに帰り、ボーイにやったら、ものすごく喜んでいました。 上海ガニは、当時上海でも高価なので中々買えないのだそうでした。

スタートから1年後、当初の契約通り「プラント診断」に訪問しました。 まったく問題なく運転されていて安心しました。 3日の約束でしたが、現場は1日で終わり、後の2日は杭州観光に連れて行ってもらいました。 西施伝説で有名な世界遺産、西湖や龍井茶の産地などを見せていただきました。
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