硫酸技術   by T.Ono
 プラント建設体験-7
 
7.神奈川県 石油化学会社(1999年)
42T/D 活性コークス法脱硫サワーガス原料:

中国宝山の仕事以来、ずっとお引き立てしてもらっていた製鉄系エンジニアリング会社の下請けで受注しました。 小規模の硫酸製造プラントです。
原料ガスは、ボイラ排気からの活性コークス法による排煙脱硫で副生する高濃度SO2ガスであり、相当量のダストを含む為、ガス精製装置が必要でした。
ただ、SO2濃度が高い為イナートガスは少なくて済み、ガス流量が小さくて済みますのでコンパクトにできます。
とは言いながら、硫酸設備用の敷地面積を示されてビックリ。 従来のように、機器をすべて平面配列したのではまったく不足です。
仕方なく、前代未聞の「4階建て」の硫酸設備となりました。 つまり、通常は平面に配列する転化器、熱交換器、乾燥塔、吸収塔などを、立体配置するのです。
当社としては初めて、3次元CADを使用して機器や配管の干渉をチェックしながらの設計となりました。
又、横型テフロンライニングノンシールポンプを、濃硫酸だけでなくガス精製関係も含め、塔循環酸ポンプに初めて採用しました。 これ自体は問題なかったのですが、運転を開始すると、耐酸煉瓦ライニングに使用した耐酸モルタルの欠片がポンプ手前のストレーナーをすぐに閉塞してしまい、試運転担当者はしょっちゅうストレーナーの掃除をせねばならず、往生したと言っておりました。

当初の契約では、わが社は現場工事の監督は除外だったのですが、元請から「電話で一々聞くのは面倒なので、2,3日来ていただけませんか?」と要請され、機械設計担当者を派遣したところ帰れなくなり、結局9ヶ月ほど駐在する羽目になりました。

運転開始当初に製品硫酸濃度が異常に上昇して発煙硫酸になってしまい、カーボン製の製品クーラーを損傷してしまいました。 客先オペレーターがミスオペで発煙硫酸を作ってしまったことが原因でした。 製品クーラーには、カーボンは避けた方がよさそうです。
8.広島県 製鉄会社(2001年)
上記石油化学会社と同じく、活性コークス法からの回収SO2の、精製設備を受注しました。
こちらで往生しましたのは、最前列に配置した不浸透黒鉛製のスクラバー。
ただの空塔ですが、フランス製を輸入することとしましたが、これがいつ入荷するのかわからない。 日本支社でも、いくら問い合わせても「調整中」としか答えが返ってこない、とやきもきしました。 「フランスまで督促に行こうか」とまで考えました。
入荷したときに出てきた検査成績表には、寸法検査等の数値は一切書かれておらず、ただ一行「すべての試験に合格した」とあるだけ。
さすがに、日本支社では、国内の協力業者の工場で寸法検査しなおすこととしたのですが、有ろうことかその検査中に、ガス入口ノズルを破損してしまい、交換することに。
その交換部品の納期が「5ヶ月かかる」と聞いてびっくり。
部品を作ってから、カーボンにテフロンを含浸させるのに時間が掛るというのですが、それにしても。
もっとよく聞きますと、「従業員が全員、バカンスで2ヶ月不在予定なので仕事ができない」といいます。 客からクレームがついていようが、客がどんなに困ろうが、バカンスの方が大事、なんですね!
この時は、上流の脱硫設備のトラブルで、部品の納期遅れは問題にならずに済みましたが、今後2度とフランス製は頼みたくない、と思いました。
皆さまも、海外品の輸入には、十分の納期の余裕を見られることお勧めします。
9.岡山県 製鉄会社(2005年)
75T/D COG脱硫スラッジ燃焼サワーガス原料:

これは、上流のコークス炉ガスからの脱H2Sに伴い副生する硫黄スラッジを燃焼したガスが原料です。
ガス中のSO2濃度は薄く、ダストはわずかですが多量のH2Oを同伴しますのでガス精製装置と、チラーによる減湿操作が必要でした。
基本的な問題は特になかったのですが、
1.排気の白煙が問題にされた
2.プラントの一番頭の冷却塔でガス温度が設計通り下がらなかった
といった問題が生じました。

1.につきましては、設計当初、NaOHによる排気除害塔からの白煙をどうするか、湿式電気集塵機を取り付けるかとの議論になったのですが、元請は「場内の一番奥ですから、不要でしょう」とのことで省略していたのが、ユーザーである製鉄会社が「何とかならないか」と問題にしてきたものでした。
循環酸温度を変えたり、排気ミストキャッチャーを変えたりしましたが改善せず、結局はお客が「我慢する」こととなりました。
2.は、空塔の頂部からスプレーしていたのですが、塔径が大きく、ガスとの気液接触が不十分であったことが原因でした。 小さな径の冷却塔ではまったく問題なかったので、そのデータで大きな径の塔を設計したのが誤りでした。
ただ、後続の系統で冷却は達成できますので、プラント全体としては問題にはなりませんでした。

このプラントでは、コストを下げるために乾燥塔と吸収塔用のコンクリートスラブを省略し、塔底をポンプタンクとして使用する設計にしました。 このため、適宜点検が必要であろうということで、塔底にはマンホールを設けました。

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