硫酸技術   by T.Ono
 耐食材料−1
 
Ceramic internal of an absorbing tower, Chiba, Japan
始めに
硫酸設備は、毎日が腐食・酸化との戦いです。
材料の選定を誤りますと、人身事故や設備の全停止を招きかけません。 最大の注意が必要です。

機器ごとの現在時点での最適推奨材料は、「設備新設」や「機器更新」に、機器ごとに述べてありますので参照してください。

硫酸による腐食でまず覚えておいてほしいことは、

金属材料について:

1.硫酸による腐食は、濃度、温度、溶存成分により大きく異なる。
金属材料では、一般的に「温度が10℃上がると腐食量は2倍になる」と言われています。 これは、金属の腐食=硫酸と当該金属の化学反応と言えますので、反応速度が温度の上昇により上昇するためです。

濃度と腐食量の関係はまったく関連がありません。 高濃度の硫酸が、常に腐食性が強いとは言えません。

炭素鋼=常温の濃硫酸では実用上問題ないが希硫酸には速やかに腐食される
鉛=希硫酸には強いが濃硫酸には溶けてしまう

又、溶存成分でも異なります。
硫黄燃焼式の硫酸は、溶存不純物が少なく精製硫酸に近いものさえありますが、「不純物が少ないから良い」とは言えません。
私は、高級ニッケル合金製循環酸ポンプインペラーが、「精錬ガス硫酸設備では何ともないのに、硫黄燃焼硫酸設備では激しく腐食される」という経験をしました。 これは、精錬ガス中には微量ですがCuなどの金属、NO2などが溶存していて、これらが不導体被膜を作るのに対して硫黄では原料がきれいすぎ、不導体被膜ができなかったことが原因と推定されました。

ですから、「自工場の例」は大いに参考になりますが、「他工場の例」は盲目的に参考にしてはなりません
参考にする場合、その工場の条件と自分の工場の条件とを厳密に比較しておきましょう。
2.乱流に注意。
特に配管では、流れの乱れの生じる部位=エルボ、チーズ、弁の下流など=に腐食が激しくみられることがあります。 特にステンレス鋼でみられることが多く、懸念のある時にはこれらの部位はテフロンライニングなどに交換しておくべきでしょう。
3.材料自身も変化していることに注意。
技術の進歩に伴い、材料自身も不断に改良され、成分が微妙に変化しています。 昔は問題なかった材料も、現在は問題を生じるかもしれません。

ノウハウに属するので詳細は語れませんが、あるステンレス合金を使ったプロセス装置を更新した際、「オリジナルと同じ」材料を使ったはずなのに、激しい腐食事故が生じました。
調査してみますと、新しい材料のC(炭素)含有量がオリジナルに比べて非常に小さくなっており、これが腐食の原因でした。
ステンレス鋼のC含有量のJIS規定は、上限しかありませんので、メーカーは「サービスのため改良」してどんどんとCの量を減らしてきていたのです。

ですから、本当に「昔と同じ」ものなのか? 変化はしていないか? 材料メーカーによく確認しておきましょう。
無機材料(セラミック、ガラスなど)及び有機合成樹脂:
これらの材料は、金属と比較すると、硫酸の濃度や温度の変化に対して鈍感です。 濃硫酸で耐食性があれば、希硫酸でも問題ないものがほとんどです。
ただし、発煙硫酸に対しては、テフロンやカーボンはお勧めできません。
詳しくは、各論で述べます。
参考資料
硫酸による各種耐食材料についてまとめた資料については、古いですが「硫酸ハンドブック」が一番よくまとまっています。(しかし絶版です)
その他、「化学装置耐食材料表」という本もあり、これは硫酸以外にもいろいろな化学薬品に対する耐食材料をまとめたものです。(これも絶版になっています)

現在では、金属の腐食曲線などの資料は、メーカーに申し入れて技術資料をもらうのが一番の早道でしょう。
(かっては、三菱マテリアルや日本冶金などのメーカーごとにネットに耐食データを公開していましたが、いまは無くなりました。 理由は不明。)
*これ以降、材料ごとに耐食性と用途を書いていきます。

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