設備新設−3 機器仕様決定:

硫黄燃焼式

  まず以下に、石油回収の溶融硫黄が原料の場合について述べます。
  転化器以降は、(操作温度などの運転条件の差は別として)他のSO2原料と共通です。

硫黄タンク
溶融硫黄タンクは通常の場合、地上置きコーンルーフタイプです。
材質としては炭素鋼が一般的ですが、もちろんステンレス鋼(SUS304)で製作すればより長寿命となります。

硫黄を130〜150℃の溶融状態に保つため、常時0.3〜0.5MPaの蒸気により加熱しています。
この加熱の目的で、内部底面上に加熱用ヒーターを設けます。 ヒーターは、単純なパイプ又は外部にフィンのついた加熱管を束ねたものです。 ヒーターへの蒸気管は、タンクの胴を貫通しており、全体が常時溶融硫黄に隠れているようにします。 これは、溶融硫黄の表面には希硫酸が生成されるので、この希硫酸による蒸気の配管の腐食を防ぐ目的からです。
ヒーターの設置例

溶融硫黄からは硫黄の蒸気が出ており、これが天井板に付着して重くなることを防ぐために、天井板上面には蒸気トレースを実施します。
外壁面はすべて保温を実施します。

溶融硫黄中に微量に含まれるH2Sを除去するため、タンク上部中央から排気を吸引する排ガスダクトを設け、ここからの排ガスはNaOHアルカリによるスクラバーにて吸収、除去します。
排ガスダクトは、硫黄の凝縮・閉塞を避けるため、蒸気でトレースしておきます。

硫黄は消防法の危険物第2類であり、着火しやすいため、万一の着火時の消火を目的として、タンク天井からタンク内へ蒸気を吹き込む配管を設けておきます。
又、着火の有無を確認するため、異なる位置に2個以上の温度警報センサーを設置しておきます。

硫黄タンクにおいては、天井板が最も早く腐食されます。 これは、硫黄中の微量H2S又はこれに起因する希硫酸によると思われますが、この予防として、天井板のみSUS304にて製作することは効果があります。

かっては半地下のコンクリートピットを溶融硫黄の貯蔵に使用した例もありましたが、通常のコンクリートは硫黄表面に精製する希硫酸により腐食されますので、液面には耐酸煉瓦ライニングを施す必要があります。

硫黄は、消防法上の「危険物第2類」ですので、100kg以上の硫黄を貯蔵するタンクは消防法上の基準に従って設計・建設する必要があります。 この基準の実際については、

危険物行政研究会著、東京消防庁監修「図解 危険物施設基準の早わかり

が最適です。 アマゾン、紀伊国屋その他でネット購入が可能です。
硫黄ポンプ
硫黄の送液用ポンプは、スチームジャケット付キャンドポンプを使います。 竪型でも横型でも差し支えありません。 接液部はSUS304とします。
(ノンシールでないタイプは、グランド部分から一旦硫黄が漏れると、固結してしまい締めても止まりません)
硫黄タンクが半地下式の場合は、ポンプ本体が液中に浸漬している竪型浸漬式のポンプを使用しますが、価格とメンテナンスの面からは不利になります。

キャンドポンプのメーカーとしては下記があります。
(株)帝国電機製作所
日機装(株)

硫黄ポンプの例
硫黄配管・弁
溶融硫黄の配管は、二重管とし、ジャケット部に0.3〜0.5MPaの飽和蒸気を流して加温します。 材質は肉厚の炭素鋼(STPG370など)を使用します。
弁も同様に外部ジャケット付とし、材質はSCS13です。

硫黄燃焼炉
溶融硫黄を燃焼し、SO2ガスを発生させる炉です。 ガスの出口温度は1,050℃〜1,150℃に達します。 SO2濃度は通常10.5〜12.0%です。 12%より高いSO2濃度の例もあるようですが、この場合は炉を通常より大きくするか又は後ろに再燃焼装置を設けたりします。

 S(c) + O2(g) → SO2(g) + 301.89kJ/mol

通常は横置き円筒形で、一端に燃焼用空気を供給し、同じ個所に溶融硫黄を供給して燃焼させます。燃焼ガスは、他端から出します。
炭素鋼製のシェルの内側に、耐火煉瓦(内側)と断熱煉瓦(外側)で内張りをします。
内部には、複数の欠円型バッフル又は1枚のチェッカープレート式のバッフルを設けます。

硫黄燃焼炉では、発生するSO2の一部(1〜3%)がSO3に酸化され、ガス中の微量のH2OによりH2SO4となり、これがわずかずつレンガを浸透してケーシングを腐食します。
この腐食を防ぐため、シェルの温度を露点以上、つまり230℃となるように12mm程度の保温を施す例があります。
逆に、できるだけシェル温度を下げ、煉瓦とシェルの間にPTFEシートを張ることにより腐食を防ぐという方法もあると聞きましたが、私自身は経験がありません。
むしろ、ケーシングの材質としてSUS304を使用すれば、寿命を延ばせると思います。

溶融硫黄は、専用のバーナーによりスプレーされ、細かい液滴となって燃焼します。
バーナーは、通常圧力噴霧式バーナーで、噴霧用メディアは使用しません。 SUS316製です。 バーナーの冷却のため、バーナー内部は2重管になっており、蒸気を常時通すことにより冷却しています。 又、燃焼空気はバーナーの周りから供給します。
バーナー先端には、取り外し可能な旋回流式のスプレーノズルを取り付けます。 ノズルは、摩耗したりスケールが付いたりしますので、運転中に炉を冷却することなく交換できるように、バーナー本体を炉から取り外せるような構造にする必要があります。

燃焼開始前に、煉瓦を十分に(700℃以上)予熱する必要があり、この予熱目的でLPGや灯油、重油などの燃焼バーナーを付属させますが、通常このバーナーは予熱が完了すれば取り外しておきます。

以上は日本の硫酸工場での標準的な仕様ですが、パルプ工業の盛んな北欧では、より高効率な炉が開発、実用化されています。 例えば、単純な横置き円筒形ではなく、燃焼効率を高めるため炉の胴部から接線流に空気を導入するもの、炉壁を燃焼空気で冷却するものなどがあり、炉の容積は1/2以下になっています。 又、バーナーも小型化し、運転中のノズルの交換が数分でできるものなど、改良されています。
ただ、溶融硫黄を微細化する為、高圧のポンプが必要になりますので、既設の炉の更新にはポンプだけでなく配管の更新も必要になることがあります。

硫黄燃焼炉内部では、高温によりNOxも副生します。(〜20ppm程度?) これは工業用硫酸中では1〜数ppm程度で問題にはなりませんが、精製硫酸など不純物を嫌う製品で問題になるときは、製品硫酸から還元除去する必要があります。
設備新設−4ホーム
概論
製造プロセス
設備新設

 設計条件
 プロセス決定
 物質・熱収支
 機器仕様決定
  
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