硫酸技術   by T.Ono
 設備新設−5
機器仕様決定:

硫黄燃焼式:

 
  これ以降は、「他のSO2原料」と構造的には同じです。

転化器
プロセスガス中のSO2を、数段の触媒の作用によりSO3に酸化します。

 SO2(g) + 1/2O2(g) → SO3(g) + 98.87kJ/mol

反応速度と平衡の関係から、触媒層の入口温度には最適値が存在します。 通常は各層を出たガスの冷却はガス熱交換器やエコノマイザーなどによる熱交換で行われますが、この冷却を、冷SO2ガスや空気の吹き込みにより行う例もあります。
この吹込みにより、ガス熱交換器の数が少なくてすみます。

円筒竪型の塔で、3〜5層(多くは4層)の触媒を保持する段を有し、それぞれの段は仕切り板によりガスが混じらないように分けられています。

触媒はグリッド及びその上に置かれた金網の上に、磁器製のボールを並べた上に置かれます。 触媒の上には、更に磁器製のボールを置きます。
この磁器製ボールは、下の段は触媒による金網の閉塞の防止、上の段はガス流による吹き飛びの防止が主たる目的です。
触媒のふるい分けの時に分離がしやすいように、磁器製ボールの直径は触媒より十分大きくしておきます。

グリッドは、転化器の径が小さい場合は側壁に取り付けたリングにより保持しますが、径が大きくなると中心にセンターカラムを立て、これと側壁のリングにより保持します。 カラムが複数になることもあります。 (これは、私のいた会社の方式です)

転化器の直径は、触媒層の通風抵抗から決定されます。 近年、抵抗が小さく高活性の触媒が開発されていますので、転化器の径は小さくなる傾向があります。

かっては、転化器本体は炭素鋼、センターカラムは鋳鉄、グリッドや金網のみがステンレス鋼でしたが、近年は全体をSUS304 or 316としたものも増えているようです。

転化器には当然点検・作業用のマンホールが必要ですが、これらはボルトナットに依らず必ず溶接により閉じておきます。 開放する場合はガスにより溶接部を溶かして開きます。 これは、加熱・冷却の繰り返しによる封止部の緩みとそれによるガス漏れを防ぐためです。
全部SUSとした場合、この開放には時間がかかりますので、開放の容易な構造を考えておきましょう。

かっては、上から順に第1層、第2層・・・となっていましたが、温度上昇が大きく、それ故触媒のふるい分け・交換頻度の大きな第1層を一番下に持ってくる例が多いようです。

また、ごく最近の設計では、従来転化器回りに設置していたガス熱交換器を、転化器中心部に設置した例もあります。
この場合
@転化器〜熱交換器間のダクトが不要、設備がコンパクトになる
A熱交換器が転化器内部に有る為、表面からの熱ロスがゼロになる
B各層触媒へのガス供給は、転化器中心から均一に供給されるので偏流を起こさない
などの利点があるとされています。
一方、設計が複雑となり、メンテナンスも困難になりますので、最初から腐食しにくい材質で製作する必要があります。

転化器、ガス熱交やダクトなど、500℃を超える高温では、炭素鋼の引張強度のデータがJISに有りませんので、これらの強度計算ができません。 それ故、各社鉄鋼メーカー等の実験値などを顧客の承認の下で使用しているようです。
触媒
V2O5を主成分としています。
昔は円柱状でしたが、最近のものはリングとかデイジーとか呼ばれる、いずれも中心に穴の開いたものです。 これは、触媒活性はそのままで通風抵抗を大幅に減らせるというもので、現在広く使用されています。
”デイジー型触媒
この他、セシウムを加えることにより、360〜410℃の低温で高活性を維持するものがあります。(バナジウムのみの場合は、430℃以上が必要) これは、入口ガスの温度を下げることにより、回収エネルギーの増加やSO2転化率の向上を図れるものです。 その他、ガス熱交換器が小さくて済む、臨時停止時の再スタート可能時間が長くなるなどの利点もあります。 価格的にはバナジウムのみの場合より高価になります。
セシウムが触媒の低温活性を推進する理由

ごく最近、トプソー社より「高濃度のSO3環境下で転化率を従来品より大きく向上させる」という新グレードの触媒が発売されました。 バナジウム濃度を従来品より高めています。 シングルコンタクトの最終段や、ダブルコンタクトの中間吸収塔へ行く前の触媒段に使用することにより、最終転化率の大きな向上が図れると言います。 これも大変高価です。

触媒の量と各層の転化率、及び各層入出口温度の最適値は、触媒会社に下記のデータを与えて計算させます。 同時に、各層の通風抵抗も計算させましょう。
  • 転化器入口ガス流量
  • 同上 ガス組成(SO2、O2、N2など)
  • 同上 ガス圧力
  • 転化器直径
  • 段数
  • SO2ガス吹き込み、空気吹込みなどがある場合はその流量と温度
  • ダブルコンタクトの場合は、中間吸収塔へ送るのは何段か
  • 希望する最終転化率
日本国内の硫酸触媒メーカーの支社、連絡事務所のサイトを下記に示します。

  モンサント触媒
  トプソー触媒→日本事務所(OTC日本支社

当方でも触媒購入のお手伝いができますのでお引合い下さい。 「個人企業は不可」であれば、知り合いの商社を通じて供給します。
ガス熱交
転化器回りのガスの熱交換器はShell & Tube typeです。
基本的に、高温側(SO3側)ガスはチューブ側を、低温側(SO2側)ガスはシェル側を流します。

炭素鋼製で十分ですが、
1)頻繁に指導・停止を繰り返すような設備においては、高温酸化によるスケーリングや閉塞
 を避けるため、最低伝熱管と上部チャンネルカバーはSUS304にて製作することをお勧め
 します。
2)精錬ガス硫酸設備やダブルコンタクト法では、乾燥塔や中間吸収塔からのガス中に
 含まれる硫酸飛沫により、ガス入口部のチューブが腐食したりシェル側が閉塞したりする
 例が多いので、伝熱管の下部はSUS304としておくことをお勧めします。
3)中間吸収塔や最終吸収塔直前の熱交では、ガス温度が硫酸露点より下がり、凝縮ドレン
 が発生することがあります。 伝熱管をSUS304にしたり、下部チャンネルカバーにには
 ドレン抜きの弁を備えておきましょう。

チューブ本数、チューブピッチ、バッフルプレート間隔を減らすことにより総括伝熱係数を上げてサイズを小さくしましょう。 ただし、これらの方策はいすれも通風抵抗を増やします。

よって総括伝熱係数は15〜20kcal/m2/hr/℃、通風抵抗は管内管外とも1.5kPa以下を目安にします。

以上は昔からの外部熱交換器の例ですが、最近の設計では「転化器」に上述しましたように、熱交換器を転化器内部に設置した例(内部熱交)もあるようです。 特に大型設備に適用されます。
又、多管式ではなくプレート式を推奨しているエンジニアリング会社もあります。


高温下での炭素鋼製熱交の強度計算につきましては、転化器の項で述べましたごとく、引っ張り強度は実験値を使用しているようです。
空気ブロワー
乾燥塔の前段又は後段に設置され(*1)、系全体の必要空気を送風します。
乾燥器前段の場合は炭素鋼製、後段の場合はSUS316製の多段ターボタイプです。

風量は生産量から算出し、これに若干(2〜5%)の余裕を見たものを仕様風量とします。
風圧は、系内のガス側機器ごとの通風抵抗を計算して、これにダクト及び流量測定用オリフィスの圧力損失(合計1kPa程度)を加えて仕様風圧とします。
従来の例では、シングルコンタクトの場合25〜30kPa、ダブルコンタクトでは30〜35kPa程度でしたが、近年の大型設備では、建設費を抑えるために45KPaとか、より高圧になる傾向にあります。

効率は高く、65%を超えることもあります。
多くの場合、排熱ボイラで回収した蒸気による蒸気タービンで駆動されています。

蒸気タービンで駆動されている場合、下記の2ケースがあります。

1)タービンのみが接続されている
2)ブロワーの両端にモーターとタービンがそれぞれ接続されている

硫酸設備のスタートに当たっては、
1)は系外のボイラから蒸気をもらい、ブロワーを回して設備を起動します。
2)はまず小容量のモーターでブロワーを回して設備を起動し、排熱ボイラから蒸気が
  出てくればタービン駆動に切り替えます。 
  この場合、モーター〜ブロワー間、ブロワー〜タービン間それぞれに接続と開放を担う
  ワンウェイクラッチを設けます。

硫酸設備においては、ブロワー用モーターが一番大きな動力を消費し、1基数百キロワット以上のこともあります。 電動機は、始動時には定常運転時の何倍もの大きな電流が流れます。 (始動電流、突入電流などと呼ばれます) 受配電設備に過大な電流が流れますと、遮断機が作動して全工場が止まってしまったりしますので、受配電設備は十分な容量を持っておく必要があります。
ただ、数百キロワット以上の直入始動に耐えるような電気設備を持つことは、小規模の工場では困難です。 このような場合、始動電流を減らすために下記の方法がとられます。

A)スターデルタ、コンドルファ、リアクトルなどの始動電流を減らす始動法とする。
B)巻線型モーターを使用する
C)インバーターモーターとする
D)流体継ぎ手を使用して、ブロワーの回転数を徐々に上げていく

A)のスター・デルタ法は、始動装置としては安価ですが、始動電流は1/3にしかなりません。
B)は、定常運転中の特性がよくないそうです。
C)は、省エネルギーになることもあり、やや高価ですが近年広く採用されています。
かっては「工場の周波数が乱れる」と嫌う向きもありましたが近年は改善されているようです。
D)は、安価ですが機械設備が増えますのでこのメンテナンスを覚悟しておきましょう。

*1: 空気ブロワーを乾燥塔の後段に設置する場合、乾燥塔が負圧になりますので硫酸設備内の各種のベントを吸引するのに有利になります。 ただし、ブロワーのケーシング材質はSUS316となりますし、乾燥塔からのエントレ硫酸がドレンとなって出てきますのでドレン抜き配管をつけるなど、SO2ガスブロワーに似た構造とする必要があります。 当然乾燥塔前置きのブロワーよりも高価になります。 
ただ、空気の圧縮熱が乾燥塔循環酸で吸収されることなく硫黄燃焼炉に行きますので燃焼ガス温度を上げることになり、エネルギー回収に貢献します。

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