硫酸技術   by T.Ono
 設備新設−6
機器仕様決定:

硫黄燃焼式:


乾燥塔
燃焼空気中にH2Oがありますと、以降に生成するSO3と結合して硫酸のミストを生じ、設備後段でのいろいろなトラブルの原因となります。 このため、93〜95%H2SO4により空気を洗浄して空気中のH2Oを吸収除去します。 H2Oの吸収により循環酸温度が上昇しますので、後述の酸クーラーにより冷却します。
以下、これについて詳述します。
  • 塔本体
  • 分酸管
  • ミストキャッチャー
  • 塔架台
  • 塔本体

いわゆる充填塔です。
従来よりあるタイプでは、炭素鋼製ケーシングに耐酸磁器製煉瓦を内張りしています。 これも耐酸磁器製の充填物を、耐酸磁器製の煉瓦のグリッド(又はバー)で支えています。
充填物もいろいろありますが、最近では多くの場合高い吸収性能と低い通風抵抗を併せ持つスーパーインタロクスサドル(Super Intallox Saddle, SIS)が使用されています。
SISはサイズごとに#1、#2、#3の3種類があります。 サイズが大きくなるにつれ、通風抵抗は小さくなりますが比表面積は下がります。 つまり、塔径は小さくできますが吸収性能は下がります。

塔径は、フラッディング速度の50〜70%の空塔速度を選んで決定します。 SISは他の充填物に比較して通風抵抗が抜群に小さく、空塔速度を大きくできますので塔径を小さくでき、有利です。 小さい塔では#2SISを、大きな塔では#3SISをお勧めします。
空塔速度は、従来0.5〜0.8m/sec程度でしたが、SISを使用すればこれを十分に大きくできます。 #3SISを使用する場合、2.2m/secとすることも可能です。
充填高は3〜4mにて、H2Oの吸収率99.9%以上が得られます。
気液比は、3〜5程度です。

#2や#3のSISがサポートグリッドから落下しないように、グリッドの上にはより大きな口径の十字リングを規則充填することもあります。

耐酸煉瓦及び充填物のメーカーは 岩尾磁器工業(株) です。
日本ガイシ(株)も耐酸煉瓦は供給していますが、充填物は購入のようです。


海外では、中国やインドで耐酸磁器製の材料が生産されており、日本でも輸入して硫酸設備に使用している例があるようです。 価格は圧倒的に有利でしょうが、化学成分や強度、浸漬試験などで合格しても、果たして20年、30年という使用に耐えられる品質なのか? 残念ながら現在の私には分かりません。

塔の天井部は、腐食されやすい個所なのでSUS316で作られたりします。 長期にわたる硫酸の浸透による塔壁の腐食の問題を避けるために、本体をすべてSUS316や316Lで製作することも効果があると思われます。
最近は、耐酸煉瓦とケーシングの間にテフロンシートを挟んで、硫酸の浸透による腐食を避けることも行われています。
(その他、各部分の詳細については、ノウハウに属しますので省略させていただきます)

MECS社は、塔全体を特殊ニッケル合金 ZeCorとすることを提案しています。 この場合、耐酸煉瓦内張りは不要になり、塔の重量が軽減されます。 ただし塔全体のデザインはMECSが行うことが原則で、ユーザーが材料のみを購入して製作することは認めていません。
充填物は従来と同じく磁製SISです。

塔全体の通風抵抗は、1.5kPa以下を目標にします。
  • 分酸管
充填物の上から硫酸を共有する装置は多種多様ですが、私どもは一定間隔に穴の開いた管を複数並べる方式を採用していました。
管列は吸収部SISの上に並列に並べられ、#1SISで管列を埋めます。 これは、酸飛沫を軽減するためと言われますが、果たして本当に効果があるのか?

穴を通過する硫酸の流速は、管内の流速より速くします。 これは、穴に抵抗を持たせることにより、できるだけ全ての管に均一に硫酸が流れることを狙ったものです。

材質としては、かっては低クロム鋳鉄でしたが、最近はSUS316L+ETFEライニングを採用しています。 メーカーによっては、両面ライニングも可能です。 Sandvik SXやZeCorなどを使用している例もあります。


MECS社のデザインでは、Unifloと称する分散装置を採用します。 これは、トラフからタコ足状に多数のパイプが出て、酸の落下点が充填物上に均一に配置されています。 各配管からの酸の流量を可能な限り均一とする方法にノウハウがあるとのことです。

Outotec社では、Unifloに似たタイプの分酸装置も持っていますが、むしろ上部開放した細い角型トラフから酸をオーバーフローさせる形式の方が、同様の分散効率でもガス抵抗は小さくて済むとのことです。

Unifloのような方法は、単純な多孔管よりは複雑でかつ高価になりますが、「酸分散を均一にすることにより充填高を下げられる」と言います。 しかしそれは、より限界に近い設計となることであり、万一失敗した時のことを考えますと、私は推奨できません。
  • ミストキャッチャー
塔からのガス中に同伴する硫酸ミストを除去するために、塔頂にミストキャッチャーを設けますが、これにもいろいろな種類があります。

1)ワイヤメッシュデミスター
名前の通り、細い糸を編み上げた網の層を重ねたものでガスをろ過し、主として「衝突」によりミストをキャッチします。
乾燥塔用には、PP製やSUS316製が使用されます。
細かいミストの除去はできませんが、安価です。 通過風速は3〜3.5m/secが可能です。 性能は、5μm以上の粒子なら99%以上と言われています。

メーカーは: 後藤商事(株) その他多数あります。

英国Begg Cousland社では、塔内に入ることなく外からメッシュパッドを交換できるユニークな方式のものを販売しています。 日本では、OTC日本支社が代理店です。
2)ブリンクミストエリミネーター
非常に目の細かいガラス繊維を密に充填したパッドによりガスをろ過します。
ミストの捕集は主としてブラウン運動によります。
数種類があり、いずれも3μm以上のミストは100%近く除去できると謳っています。最も高性能のもの(HE型、HP型)では1μm以下のミストも95%以上除去するとのことですが、通風速度を0.1〜1m/secとせねばならず、大変大きな面積が必要になります。
硫酸用には流速=〜2m/secで最も安価なSC型が多く使用されています。
元来、モンサントの製品でしたが、現在は日本ガイシ(株)が取り扱っています。

同様のエリミネーターは、ベルギーコーク社(Koch-Gritsch LP)=日本代理店(株)ハイポテックが輸入販売しています。 上述Begg Couslandも同様のミストキャッチャーを販売しています。
3)キムレミストエリミネーター
プラスチックフィラメントを、独特の梯子段状・格子状に組み上げた層を、何段か重ねた構造になっています。 線径の異なる格子を複数組み合わせることにより、低通風抵抗でも高い補修性能を発揮すると謳っています。 (流速=2.5m/secにて2〜4μmの捕集効率=99%以上)
材質としてはPPもありますが、乾燥塔用としてはETFEやPFAがお勧めです。
米国KIMRE社の製品ですが、日本ではカンセツ産業(株)が取り扱っています。
いずれも、通風抵抗は0.5kPa以下を目標にします。
  • 塔架台
従来は、吸収塔と共に、コンクリート製スラブの上に設置されていましたが、近年は鋼鉄製架構に乗せられているものもあります。 これは、塔の耐食性向上とともに、漏酸による腐食の恐れが減少したためと思われます。
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