設備新設:
硫酸設備を新設する作業は以下の順です。
設計 → 建設 → 試運転 → 生産運転
このうち、設計は;
顧客要求・設計条件のまとめ
↓
プロセスの決定 → PFD、P&ID作成
↓
物質収支、熱収支の計算
↓
機器仕様(電気・計装含む)の決定 → 図面類、購入仕様書作成 → 購買作業
↓
機器配置決定、土建仕様決定、工程表作成
↓
工事用図面類作成
実際のプロジェクト(設計、建設工事含む)は複雑であり、エンジニアリング会社に任せるべきですが、上記の設計手順のうち、注意すべき点を述べておきます。
- 設計条件
- プロセスの決定
- 物質・熱収支
- 機器仕様の決定
設計条件:
まず、客は(あるいはあなたの会社は)何をしたいのかを明確にしましょう。 項目としては
- 原料
- 転化率
- 排ガス処理方法
- エネルギー回収
- ユーティリティー条件
- 気象条件
- その他の要求
これらにより、生産量、副産物の量、機器の種類と仕様などは決まります。
生産量は、特に原料の量及び成分と転化率により決まります。
1)原料(概論→原料を参照)
プロセス、必要機器は原料により大きく変わります。
乾燥塔以降は皆同じですが、それより前の部分が違います。
A) 溶融硫黄(石油回収硫黄)
→硫黄燃焼炉、ボイラが必要 ガス精製装置は不要
B) 固形硫黄(溶融硫黄を固めたもの)
→A)に加えて、硫黄メルター、硫黄濾過機が必要
C) 精錬ガス、硫化鉄鉱、脱硫回収硫黄、同H2S、廃硫酸
→燃焼炉(分解炉)、ボイラ、ガス精製装置が必要
D) 脱硫回収SO2(ウェルマンロード法)
→何もいらない(脱硫設備の後、直接乾燥塔に接続)
E) 脱硫回収SO2(活性コークス法)
→ガス精製装置が必要
2)転化率
原料とそれから得られるプロセスガスの成分から、目標転化率を定めましょう。
A) 溶融硫黄の場合、ダブルコンタクトが可能であり、最終転化率も99.9%が可能です。
B) 転化器入口でのSO2濃度が低いと、ダブルコンタクトは不可能です。(4%前後が限界)
→物質・熱収支を計算して確認してください。
C) シングルコンタクトの場合も、高性能触媒を使うなど、条件によっては転化率99%が
可能のようです。 (私は未経験)
*転化器入口のSO2濃度は、(硫黄燃焼以外の原料では)ガス精製装置を通過する間に
空気を吸い込みますので、炉出口より低下します。
*ダブル・シングルいずれの場合も、転化器入口のガス条件を触媒メーカーに示して
最終転化率を計算させてください。
3)排ガス処理方法
現在の日本のSOx規制では、たとえダブルコンタクト法にしても吸収塔排気中のSOxは
500ppmを超えますので、何らかの対策が必要です。
一般的には、吸収塔排気をアルカリ溶液にて洗浄し、SOxをアルカリ硫酸塩、亜硫酸塩
水溶液の形で除去します。 これらの副生物は、自家消費するか、外販するかして
処理せざるを得ません。
副生物の処理に問題ない場合(肥料工場など)以外は、ダブルコンタクト法を採用し
かつ排ガス処理装置を設置します。→排ガス除害装置
4)エネルギー回収
硫酸設備は燃焼、SO2転化、吸収の各工程全てが発熱反応ですので、これらの
熱エネルギーの回収が可能です。 通常は蒸気の形で回収し、そのまま他工場で
利用するか、発電に使用します。
顧客がどの程度のエネルギー回収を望んでいるのかにより、プロセス機器の数と
位置は変わります。 →「製造プロセス」参照
又、エネルギーの回収よりプラントコストを下げることが目的なら、プラント全体を
小さめに作り通風抵抗を上げるようにします。
5)ユーティリティー条件
特に、冷却水の水質と温度は大きく影響します。 冷却水として海水を使用する場合、
腐食性が強いので酸クーラーなどの機器の材質には注意しましょう。
海外の場合は、電圧にも留意しましょう。
6)気象条件
特に気温と湿度はプロセス設計に影響します。
又、積雪や降雨量、海外の場合は地震係数、風係数、停電の頻度などにも配慮して
おきましょう。
7)その他の要求
客先からの個々の要求には、可能なものとそうでないものがあります。 出来るだけ
対応するようにしましょう。
例えば、普通硫酸工場は平地に作るものですが、敷地面積の制約が厳しく、「4階建て」
の立体に作った経験もあります。
→設備新設−2へ
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