硫酸技術   by T.Ono
 硫酸概論−1
 
始めに:
まず、硫酸について概論を簡単に述べます。 もっと知りたい方はウィキペディアの「硫酸」にもやや詳しく解説していますので、参照してください。 (ただし、ウィキペディアにも一部間違った記述がありますので、鵜呑みには居ないでください。→「ウィキペディアの誤謬」参照)
また、硫酸協会の「硫酸ハンドブック」も種々のデータの検索には便利です。 改訂2版が昨年末に出ていますが、内容的には以前の版でも十分実用的です。

私の以下の説明は、あくまでも実用を主眼にしたものです。
歴史
最初に硫酸を製造したのは、イスラムの錬金術師たちのようです。 緑礬(硫酸鉄)を乾留して作ったのだとか。
工業的にはヨーロッパにて、硫黄と硝石を同時に燃焼させる方法で製造されたのだとか。 反応を鉛張りの部屋で行ったのでこの方式を「鉛室式」と呼びます。
19世紀には白金触媒を使用してSO2をSO3に酸化する「接触式」硫酸製造法の特許が申請されました。 触媒としては、その後(1915年)より安価な5酸化バナジウムV2O5を使用することが始まりました。

日本国内での製造は、1872年に大阪造幣局にて始まったそうです。 用途としては、貴金属地金の洗浄や分析などであったとか。 民間企業としては、1975年に大阪に設立された「硫酸製造会社」が始めであり、日本で最初に過リン酸石灰の製造に使用されたそうです。 これらはいずれも先述の「鉛室式」でした。

第二次大戦後、少量増産のため肥料も増産が図られ、硫酸製造も活況を呈しました。 当時は、精錬排ガスからの硫酸以外では、硫化鉄鉱や土硫黄鉱を原料とするものがほとんどでした。
石油回収硫黄(単体硫黄)を原料とする硫酸設備は、1971年に稼働した日本燐酸(株)千葉工場が最初です。
現在、濃硫酸の製造ができないという不利から硝酸式は姿を消し、環境問題への関心の高まりとともに硫化鉄鉱を原料とする設備も休止を余儀なくされ、現在の設備はすべて接触式であり、精錬ガス・脱硫回収ガス以外はすべて溶融硫黄が原料です。

現在日本では、年間600万トン〜700万トンが生産され、250万トン前後が輸出されています
製造方法
製造方法としては、大別して

1.NO2をSO2の酸化触媒として用いる「硝酸式」(鉛室式もこの一部)
2.5酸化バナジウムを酸化触媒とする「接触式

がありますが、硝酸式は製品として希硫酸しか得られないという不利があるため、現在はまったく採用されていません。

接触式による製造方法は、基本的には下記の3段階の反応を経ます。

1)燃焼 =SO2を発生させる
  硫黄が原料の場合:
  S + O2 → SO2
  黄銅鉱が原料の場合:
  4CuFeS2 + 9O2 → 2Cu2S + 2Fe2O3 + 6SO2(熔錬炉にて)
  Cu2S + O2 → 2Cu + SO2 (転炉にて)

2)転化 = SO2を酸化してSO3とする

  SO2 + 1/2O2 → SO3(転化器にて)

3)吸収 = SO3を水と反応させて硫酸(H2SO4)を作る

  吸収塔内にて、循環濃硫酸(98.3 - 98.5%H2SO4)にSO3を吸収させる
  
  H2SO4・H2O + SO3 → 2H2SO4

  濃度の増した循環硫酸を、水で希釈して所定の循環硫酸濃度に戻す

  H2SO4 + H2O → H2SO4・H2O

  総合すると

  SO3 + H2O → H2SO4

 *実際の濃硫酸は、H2SO4とH2SO4・H2Oの混合物である。

原料が硫黄以外の場合、焙焼ガス中に粉塵を含む場合がほとんどなので、1)の後に「ガス精製」設備を設けて粉塵を除去し、クリーンなガスとします。

この他、二重接触式(ダブルコンタクト)という方式があります。
これは、部分的に転化したガスを中間吸収させることによりSO3を減らし、再度転化・吸収させることにより総合転化率を上げるものです。

詳しくは、「製造プロセス」を参照ください。
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