by T.Ono
 製造プロセス-1

In front of Sufur Burner & WHB, Baosha Steel Mill
概要:
一般的な硫酸製造プロセスを分類しますと下記となります。
1.原料による分類
  1)硫黄燃焼式・・・石油回収硫黄など高純度(99.9%以上)の硫黄が原料
  2)冶金式・・・銅、亜鉛、ニッケルなどの精錬ガスや硫化鉄鉱を原料にする
  3)その他原料・・・コークス炉ガス脱硫硫黄、同サワーガス、排煙脱硫回収SO2、
    廃硫酸分解ガスなど
2.転化率による分類(単純接触式と二重接触式)
3.エネルギー回収重視か建設費重視か
又、特殊なプロセスとして
1)湿式法
2)非定常転化器
2)WSA法
3)SULFOX法
 などもあります。

一般的なプロセス:
 A)原料
硫黄燃焼式:
 現代の硫酸製造プロセスは、すべて「接触式」です。
 これによる製造方法は、基本的に「燃焼」「転化」「吸収」の3段階の反応を経ます。

 1)燃焼 =SO2を発生させる
   硫黄(石油回収硫黄)が原料の場合:
   S + O2 → SO2

 2)転化 = SO2を酸化してSO3とする

   SO2 + 1/2O2 → SO3(転化器にて)

 3)吸収 = SO3を水と反応させて硫酸H2SO4を作る

   SO3 + H2O → H2SO4

冶金式: →「概論」「原料」参照
 原料が黄銅鉱、硫化鉄鉱などの「冶金式」の場合、焙焼ガス中に多量の金属酸化物粉塵を含むので、硫黄燃焼式にはない「ガス精製」の工程が必要です。

 1)燃焼
   黄銅鉱が原料の場合:
   4CuFeS2 + 9O2 → 2Cu2S + 2Fe2O3 + 6SO2(熔錬炉にて)
   Cu2S + O2 → 2Cu + SO2 (転炉にて)

 2)ガス精製
   乾式、湿式の集塵装置により金属酸化物を除去し、クリーンなガスを得る。

 3)転化 ・・・ 硫黄燃焼式と同じ
 4)吸収 ・・・ 硫黄燃焼式と同じ

その他原料:
 これは、原料によりクリーンなものとダーティーなものがあります。

 クリーンなSO2ガス(ウェルマンロード法排煙脱硫からの回収SO2)
  →ガス乾燥、転化、吸収の装置のみ
 ダーティーなガス-1(コークス炉ガス回収硫黄、同サワーガス、廃硫酸分解など)
  →冶金式とほぼ同じ装置を使用
 ダーティーなガス-2(活性コークス法脱硫回収SO2)
  →上記「ダーティーなガス-1」の燃焼装置が無く、「ガス精製」以降、冶金式とほぼ同じ

 その他、現在も運転しているかどうか不明ですが、石膏を熱分解してSO2を得るプロセスが
 旧共産圏で採用されていました。
 現在も、石膏と粘土、硅砂よりSO2とセメントクリンカーを製造するプロセスを海外の文献で
 見たことがあります。

原料として使えるかどうか?」は、全て「採算がとれるかどうか」に帰結します。
純度の良い回収硫黄が安価に手に入る現在では、硫化鉄鉱は使われません。 しかし、銅やニッケルの原鉱の純度が下がり、湿式精錬が多用されてきている現在では、精錬=硫酸使用量の増加(かっては、精錬=副生硫酸の増加でしたが)となります。 銅や亜鉛などの生産量の増加に伴い、硫酸の滋養はかえって増えるかも。 硫化鉄鉱の、再度の出番があるかもしれません。
 B)転化率
転化率を高めたい時には、二重接触式(ダブルコンタクト)という方式が最適です。
これは、上記の2)の途中、転化器で部分的に転化したガスを中間吸収させることによりSO3を減らし、再度転化器に供給して転化・吸収させることにより総合転化率を上げるものです。
つまり、通常の(シングルコンタクト)方式と比較して、中間吸収塔や同用ポンプタンク、循環ポンプ、クーラー、再加熱用のガス熱交換器などが必要になります。
最終転化率は、条件にもよりますが99.9%が可能とのことです。

ただし、この方式では、転化器から出るガスの顕熱の一部は、中間吸収塔の酸に吸収され、冷却水中に放出されますので、回収エネルギー量はシングルコンタクトに比べて減ることになります。

これほどの転化率には至りませんが、同様に転化率を高める方法として、セシウム強化触媒を利用する方法もありますが、この場合はシングルコンタクトなのでダブルコンタクト用の機器の追加は不変です。
 C)エネルギー回収 or 建設費?
硫酸設備の燃焼、転化、吸収のすべてのプロセスは発熱反応なので、この熱を蒸気や電力などの形で回収することが可能です。 これを最大限に回収するか、または回収は抑えて建設費を減らすかの選択もあります。

 S(c) + O2(g) → SO2(g) + 301.89kJ/mol(燃焼)
 SO2(g) + 1/2O2(g) → SO3(g) + 98.87kJ/mol(転化)
 SO3(g) + H2O(l) → H2SO4(l) + 132.46kJ/mol(吸収)

エネルギー回収を重視する場合:

 燃焼熱 → 燃焼炉出口の排熱ボイラにて回収
 転化熱 → 転化器回りの排熱ボイラ、エコノマイザー、スーパーヒーター、空気予熱器にて
 吸収熱 → 循環酸の冷却にボイラ給水を利用する、又はHRSHEROSといった熱回収
 システムを設置する。*1

 *1: HRSは米国MECS社、HEROSはドイツOutotec社が推奨するシステムで、いずれも
 SO3の吸収熱を1MPa程度の低圧蒸気として回収します。

 又、硫黄燃焼炉出口ガスの濃度をできるだけ高めることにより、ガス温度を上げることも効果があります。 空気ブロワーを乾燥塔の後ろに配置することにより、圧縮熱を燃焼ガス温度の上昇として回収することも可能です。

建設費を抑えたい場合:

 蒸気や電力を回収しても消費先が無いとか安い、又は大型プラントで機器自体が大きく高価になる場合などは、建設費を抑えるべきです。
 転化器各層の入り口温度の調整に、乾燥塔出口の乾燥空気(精錬ガスの場合は、乾燥SO2ガス)を吹き込むことにより、熱交換器を省略します。
又、空冷熱交換器により転化器周りのガスを冷却し、加熱された空気は熱回収せずに大気放出します。

 燃焼炉出口ガスは排熱ボイラにて冷却するしかないと思われますが、これもボイラ出口温度を上げてボイラを小さくし、その後空冷することもできます。
 アフリカ某国向けのパイライト原料のプラントでは、焙焼炉出口ガスを水で急冷し、まったく熱回収しない方式でした。

転化器入り口のO2/SO2比率を小さくすれば、プロセスガスの総量は小さくなりますので、プラントコストは下がります。 ただしこの時は、転化率を維持するためには、高性能触媒を使用する必要があります。 触媒メーカーとの協議を通じて検討するべきです。

 プラント全体の機器を小さくすれば当然建設費は下がります。 この場合通風抵抗が上がり、ブロワーでは多大な動力が必要になりますので、回収スチームを使用するスチームタービンでブロワーを駆動します。 プラント全体の通風抵抗は、かっては35KPa程度でしたが、最近の、特に大型プラントでは45KPa〜70KPaにもなる例があります。

乾燥塔と吸収塔は本来循環酸濃度が違うべきですが、ポンプタンクを共通にして同じ98%の硫酸を循環することも実用化されています。 この場合は、ポンプタンクが減るだけでなく濃度調節計や液面調節計も一つで済みます。 しかし、空気やガス中のH2Oの吸収に98%硫酸を使うということは、H2Oの吸収率に影響しないのか? その後、追随する例をあまり見ません。
以下、PFD (Process Flow Diagram)の例を示して説明します。

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