硫酸技術   by T.Ono
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Butterfly (Graphium Sarpedon) in early Summer
硫酸は腐食性が強く、人体を激しく損傷します。 それ故、取り扱いには細心の注意が必要です。
又、硫酸設備はSO2やSO3などのガスによる呼吸器の傷害や、炉や転化器などの高温機器との接触による火傷の危険もあります。
これらの防止と、受傷時の対策について述べます。

硫酸
1.法的規制
消防法:
硫酸及び発煙硫酸には、かっては消防法の危険物としての厳しい規制がありましたが、1990年以降は「非危険物」となりました。 しかし、60%を超える濃度の硫酸は「消防活動阻害物質」としての所轄消防署への届け出が必要となっています。
具体的な届出書類などについては、所轄消防署に問い合わせてください。

毒物及び劇物取締法:
濃度10%を超える硫酸は劇物としてこの法の取り締まり対象になります。
製造、輸入を行おうとするものは都道府県知事を通じて厚生労働大臣に登録申請を出す必要があります。 販売を行おうとするものは都道府県知事に登録申請します。
製造、貯蔵、販売、運搬及び廃棄についての規制があります。 特に硫酸設備の建設を計画されているなら、製造所及び貯蔵所の規制を満足する設計としなければなりません。

その他にも、
特定化学物質等障害予防規則
石油化学コンビナート等災害防止法
などにも留意しておきましょう。
2.設備上の注意
保護具で防いだり、事故が起こってからの対策よりも、事故の予防が一番大切です。
この意味では、乾燥塔、吸収塔、酸クーラー、酸配管、貯酸タンクなどおよそ硫酸を取り扱っている装置は「腐食して穴が開く」ことを常に覚悟しておきましょう。
事故の予防の意味では、
1)出来る限り耐食性の高い材料(テフロンなど)を採用する
2)金属材料の場合、定期的に肉厚測定や内部点検を実施し、腐食量を確認しておく
3)漏洩事故が起こっても人的事故につながらないよう防液堤、保護壁、二重管などを設置しておく
4)酸の設備は通路などからはできるだけ離すが、やむを得ないときは「危険」である旨掲示をしておく
5)踏み破る恐れのある天井には、渡り床を設け、直接天井板に登ることがないようにしておく
3.作業時の注意
硫酸は、強酸であり、脱水作用が強い為肌に触れると激甚な薬傷を引き起こします。
それ故、硫酸の取り扱い時には、適切な安全保護具を使用する必要があります。

保護具としては
顔面シールド・・・目の保護(通常の保護メガネ単独では、隙間からの硫酸の侵入の恐れがあるため不可)
ゴム手袋・・・手の保護
ビニル製合羽・・・体の保護

硫酸を取り扱うメンテナンス作業時は、必ずすぐそばに水のホースを置いておき、常時水を流したままで作業することが肝心です。 ちょっとでも硫酸が体にかかった時には、出来る限り速やかに、大量の水で洗うことが必須です。
加えて、硫酸のタンクや配管などに関するメンテナンス作業時は、たとえ内部を空にした後でも「ここにはまだ硫酸が充満している」と仮定して作業を開始する必要があります。
往々にして、「空にしたつもり」であったのが、わずかに残った硫酸のために重大な事故を引き起こすことがあります。

又、硫酸の入った金属製のタンクや配管には、腐食によって生成した水素ガスが溜まっていることがあり、これにより爆発事故を引き起こすことがあります。 私が聞いたインドでの事故では、停止中のタンクを開放しようとガスバーナーで蓋を切ろうとして、水素爆発が起こり、4人が死んだという例があります。
水素は軽く、容器の上部に溜まっていますので、火を使わない手段で上部を開放してから、できれば通風により内部を換気したのちに火を使った作業を始めるように習慣づけましょう。
4.安全設備
硫酸の薬傷に対する第一の対策は、「水で洗う」ことです。
この意味で、硫酸設備の中で、塔、酸クーラー、酸配管など、硫酸に接する可能性の高い場所には、アイウォッシャー、ボディウォッシャーを設置することが必須です。
これらは、いざという時に閉塞して水が出ないことの無いよう、毎日時間を決めて水を流す習慣をつけておきましょう。
又、これらのほかに、手動弁を開ければ水の出るノズルをあちらこちらに設けておきましょう。
これは、安全の意味と同時に、硫酸を扱うメンテナンス作業時にも必要となります。

硫酸の漏洩が生じた時の対策に、乾燥砂や消石灰を常備しておきましょう。
特に砂は、漏れた硫酸に散水する前に硫酸を吸収させれば、排水に流れる硫酸の量を減らせますので有効です。
5.受傷時対策
上述しましたが、硫酸の薬傷に対する第一の対策は、「できるだけ早く水で洗う」ことです。
硫酸を皮膚から洗い流すことと、火傷なので冷却するという意味があります。 硫酸は強い脱水作用がありますので、わずかでも残留していますと、やがて濃縮して皮膚に重大なやけどの跡を残します。 この意味で、一分一秒でも早く水洗することが肝心です。
十分な水洗の後、医師に診せて手当してもらいましょう。 できれば、薬傷に経験のある医師をあらかじめ調べておきましょう。
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