硫酸技術   by T.Ono
 トラブル事例-5
 
13.「想定外
若いころ、担当していた硫酸工場で、急に排気の白煙が増えました。 又、SO3クーラーからドレンが多量出てまいりました。
すぐに「ボイラーの水管に穴が開いた」と思いました。 長期の修理が必要と判断し、全停止してSO追い出し、冷却を手順通りに実施しました。
しかし、ボイラに損傷は全く見つかりません。 トラブルの原因が分からず、あれこれと設備の内部を点検しておりましたら、ボイラ出口部のガスダクトのライニング煉瓦の下の部分が少し損傷して、何か液が溜まっていたような跡が見られました。
実は、この部分には、SO2ガスを一部取出して、重亜硫酸ソーダの製造設備に送る配管が分岐しています。 そして、ガス中に微量含まれるSO3を吸収除去するスクラバーに接続されています。
「まさか、スクラバーの硫酸が逆流した?」
しかし、ガスダクトの最頂部はスクラバーの入口より3mほども高く、逆流するにはこれ以上の高さに硫酸が来ないといけません。
「まさか」と考え、色々と調べましたが、他に硫酸や水がやってくる場所はありません。
そして最後に、スクラバー下部ポンプタンクの液面制御が故障祖いていたことが判明しました。 なんと、液面計が故障していたため、スクラバー中に硫酸が3m以上も溜まっていた! ということのようでした。
実プラントを運転していますと、このように「全く想定外」の事態に至ることが有ります。
しかし、それは、今まで私ども個人が「経験したのは初めてだ」というだけで、本来ありうべきことなのです。
福島の原発事故もそうですね。 「16mの津波なんて想定外だった」といいますが、それって単なる無責任ですね。 昔、そういう大津波は何度かやってきたという伝承があるからです。 それに、事故が起こった時の損害を想像したら、どんなに準備してもしすぎることは無いでしょう。
高校野球のある監督が「エラーしても怒らないから、エラーしたその直後に、何をするべきかを常に考えよう」と指導していると聞きました。 福島原発事故は、この「エラー後にやるべきこと」もやっていませんでした。
「想定外」ということばを安易に使ってはなりません。 想定してなかった自分を恥じましょう。
14.蒸気漏れ検出器
入社3年目、日本で最初の単体硫黄原料の硫酸設備の建設・試運転に携わりました。
プラントスタート、全員でバンザイしたのもつかの間、エアークーラーからドレンが出始めました。 結構な量です。
ベテランの課長は、「触媒が新しいからなあ」などと言っておりましたが、それならドレンの発生量は漸減するはず。 ところが、全く減る様子が有りません。
「どこか、ボイラー機器が漏れてませんか?」
と提言しましたが、ベテラン連中は、それよりも連日乾杯ばかり重ねています。
蒸気漏れがあるか否か? 確認するべいと、自分で「蒸気漏れ検出器」を作りました。
簡単です。 太めのガラスの短管の両方の開口部に、φ8のガラス管付きのゴム栓を取り付けただけのもの。
これに、コンバーター各層出口のガスを通しました。 圧力検知用のマノメーター配管からです。
上の層の出口ガスは、ガラス管内では透明ですが、大気中に噴出したとたんに、真っ白になります。 SO3分が、空気中のH2Oと結合して、硫酸の微粒子ができるからです。 ガラス管中は、ドライのガスだけなので、透明なのです。
有る層の出口のガスを通すと、ガラス管内でもすでに真っ白。 つまり、この転化器ガス中には、既に多量のH2Oがある! ちょうどその層の前には、熱回収用のスーパーヒーターが有りました。
課長を読んできて、目の前で実演して見せますと、ようやく「漏れている」ことを認めました。
出来たばかりの設備です。 当然、建設担当のエンジ会社の責任です。 エンジ会社は、漏れ箇所の修理に、全社でも3本の指に入る溶接技術者を呼んできました。 失敗は一度でも恥ずかしい、ましてや「二度と同じ失敗は繰り返さない」という気持ちだったのでしょう。
この「蒸気漏れ検知器」、誰に教わったわけでもありませんが、ふと思いつきました。 先輩たちを説得するには、理屈ではなく事実。 20代初めの、大変柔らかかった私の頭が生んだものでした。
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